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お知らせ

2011年10月17日

税務訴訟雑感(6)

すすき

 富山地裁平成22年2月の判決における判示事項に、
「青色事業専従者給与は青色申告者に恩恵的・政策的に与えられた特典
であり、同特典を主張する納税者に立証責任があると解するのが相当で
ある。」と記されている。
 ある費用が必要経費にならないとするならば、多くの場合課税庁側に
立証責任がある。
たとえば、給与の支払いに対して、「扶養控除申告書」等所定の書類を
具備し、その勤務の対価として本人に支払っていたとして、
税務署員が、
「この人は本当に働いていますか?
 何時から何時まで何の仕事をしていますか?
 それを証明するものを出さないと必要経費として認めませんよ。」
と言ったとしても、
「これを必要経費として認めないというなら、この人が働いていないと
 いうことを立証してください。」
と言い返せばよいわけだ。
これは、給与は本来の必要経費となるものだからだ。
 ところが「青色専従者給与」については違っていて、生計一親族に支
払う給与は必要経費に算入しない(所得税法56条)のが原則で、ある
一定の要件を満たして、税務署長にお願い(青色専従者給与に関する届)
をした場合には恩恵的に認めてあげようという内容のものなのだから、
専従の事実は納税者が立証しなければならないと言っているのだ。
 所得税の調査において、青色専従者給与の支払いがあると、
「勤務の状況は?何時から何時まで何をやっていますか?
 タイムカードはありますか?」
などなど質問され、これを否認しようというのが見えてくる。
 青色専従者給与により所得分散し、節税をはかるのは大変効果的であ
るだけに、否認されたときのダメージも大きなものとなる。
 青色専従者給与安易に決定しないで、勤務状況を検討の上、給与の額
を決定し、疎明資料も残しておくことが必要である。

                     税理士 
中山 昌実